アダルトチルドレンはどうしてヘンな人に絡まれやすいのか<前編>

アダルトチルドレン(毒親育ちの人)の多くが抱える問題として、「ヘンな人に絡まれやすい」ことがあります。日常生活・人間関係での不都合や不安に悩み、生きづらさの原因であることが少なくありません。また、毒親育ちは、イジメや搾取のターゲットにされやすい傾向があります。あなたが毒親育ちなら、思い当たる体験が一つや二つではないはずです。

 

「どうして毒親育ちは不条理な思いをさせられるのか」
「どうしたら理不尽な相手のターゲットにされずに済むのか」

 

アダルトチルドレンの方のカウンセリングで、よく取り上げられるテーマです。ここでは毒親育ちが「ヘンな人に絡まれやすい」理由について考えてみましょう。

 

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「こういうものだ」と思い込まされる三つの理由

この問題の一つの側面は、毒親に育てられる過程で作りあげられた人格です。無条件の愛情、安全を十分に与えられなかったことによるものです。毒親育ちの人の絡まれやすさ、騙されやすさには、三つの理由があります。

 

1. 不安や恐怖は迎合することで回避

フェミニズムに影響を与えた精神分析家で医師のカレン・ホーナイは人間関係で不安を生じたときの防衛方法として次の三つを挙げています。

 

 ①迎合(相手に近づく)
 ②攻撃(相手に対抗する)
 ③ひきこもり(相手から離れる)

 

赤ちゃんや幼い子どもは、母親に対して不安を感じたとき、②攻撃や③ひきこもりを選択することができません。食事や睡眠、安全な環境を与えられないと命の危機があるからです。そこで、基本的な手段として①迎合を選び、相手の顔色をうかがい、相手を喜ばせようとしたりするのです。

 

相手に近づくことで、人間関係の不安が払しょくされ、温かな愛情や関係性を十分に受け取った子どもは、人間関係における「基本的な不安」がなくなって、安心してのびのびと個性を育てていけるのです。しかし相手が毒親の場合、「基本的な不安」がなくなりませんから、さらに子どもががんばって、手間のかからない子、聞き分けの良い「イイ子」を演じることで、子どもの存在を認めてくれるよう求めるのです。もちろんワガママなど言いませんし、本当にやりたいこと、好きなこと、ほしい物を主張したりしません。親が与えてくれるもの、与えてくれないことを「こんなものだ」と受け入れさせられてきた歴史があります。この歴史が長いほど、不条理に対しての耐性がついて、自分の望まぬ状況に疑問さえ抱かない、「こんなものだ」と納得することが習慣になります。

 

大人になっても、相手の顔色をうかがい、相手の意見を「そういうものかもしれない」よく考えずに肯定してしまう癖はそのままです。そこをヘンな人から絡まれたり、つけこまれたりしてしまいます。

 

2. 海よりも深い諦めを学んだ

不安を感じた子どもがどんなに近寄ってアピールしても、毒親が無関心で承認を得られない場合、子どもは幼くても③ひきこもりを選択することもあります。ときどき表情が乏しい乳幼児が見られますが、すでにこの幼さで③を選択したのでしょう。生きることすら「もうどうでもいい」と諦めてしまったのです。

 

①の迎合を選んだ子どもでも、ご近所の家庭、やがて増えてくるお友だちの親と比べて、「うちはヘンだ」「うちの親はおかしい」と気づくのです。子どもの意思決定を否定する過干渉の毒親子どもから搾取しようとする毒親との関係性で、よその家の子どもたちのように要求をしても得られないということを何度も何度もくり返し体験します。その結果、毒親育ちの子どもたちは、幼くして「諦める」という絶望を学びます。

 

望むことの無意味さを心に深く刻まれた人は、相手に何も望みませんし、相手が「ヘンだ」「おかしい」と気づいても、相手のズルさや嘘も受け入れてしまいます。否定しても、どうにもならないと知っているからです。ヘンな人に利用されやすいのはこのためです。

 

3. とことん我慢することを身に着けた

こうして毒親に育てられた子どもたちは、②攻撃すら無意味だし、エネルギーの無駄だと感じています。この時点で、毒親の洗脳が済んでいます。こういった子どもたちにとって、たとえば、両親のケンカや自分への暴力、孤独、経済的不安、家族のメンバーの起こすトラブルといった不条理の中で、じっと目をつぶって嵐が過ぎ去るのを我慢して待つしかありませんでした。それが唯一の手段だったからです。なかには、家庭外に避難場所を持つことができた子どもたちもいます。学校や友だちの家、保健室や図書館、あるいは夜の繁華街など。でも、子どもであることを理由に、家に帰されてしまいます。これでは洗脳は解けません。

 

もちろん、戦ってみようとした子どもたちもいるでしょう。毒親に挑むことができるのは、身体的にも社会的にも自分の基盤を持ち、毒親から十分に距離を置くことができた場合のみです。

 

2020年4月に5歳の三男を餓死させた母親Iと彼女を洗脳していたママ友Aが2021年3月に逮捕された事件(福岡5歳児餓死事件)が起こりました。IとAは2016年に子どもの通う幼稚園で知り合うと、やがてAがIを支配する関係になります。さまざまな架空の話を吹き込まれたIは、Aに生活費や財産を毟りとられ、2019年にはAの指示で夫とも離婚してしまいます。完全な洗脳状態に陥り、三男の死後さえAの指示がないと判断ができない状態でした。

 

ところが逮捕からわずか1週間で、5年間に及ぶ洗脳状態から解け、容疑を全面的に認め、自責の念に駆られるIの供述が報じられたのです。その変化の早さを疑問視する声も少なくなりませんでした。Iに変化をもたらしたのは、Aから物理的に距離です。逮捕され、恐怖の対象だった支配者Aから距離を置き、やっと安全を実感できたことで、本来の自分を取り戻すことができた、と考えれば、納得できる変化といえます。実際、拘留されたI自身「あのとき(Aからの支配)に比べたら自由な気がします」と漏らしたといいます。

 

相手に迎合し、疑うことなく「そういうものなのだ」と信じ込み、洗脳される。すでにお気づきのとおり、母親Iには、アダルトチルドレン特有の騙されやすさが見て取れます。こうして、財産を奪われ、家族を失う不条理の中でさえ、我慢し続けてしまうのです。

 

 

<後編>では、毒親育ちの人を餌食にしようと「絡んでくるヘンな人」である、ママ友Aのタイプについて観察していきます。そして「絡んでくるヘンな人」から、絡まれないためにどうすればいいか考えてみましょう。

 

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