毒親に育てられた子どもたち[アダルトチルドレン(AC)]の4つの苦しみ

自分の親が「毒親だ」と気づいたのに、親元から離れられないアダルトチルドレン(AC)は少なくありません。カウンセリングでも一人暮らしの話になるとためらう方がいます。十分、経済性も生活力を獲得し、親の力なしに暮らしていけるにもかかわらず、です。なかには、一旦は独立や絶縁をしたものの、罪悪感から実家に戻るACもいます。

毒親の支配下にいるしかなかった子ども時代には、逃げたくても逃げることはできませんでした。幼い頃から強く刷り込まれた「家族から離れてはいけない」という親の信念が大人になったACを精神的に縛りつけるのです。

 

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毒親に育てられた人の特徴

アダルトチルドレン(AC)の苦悩はさまざまですが、毒親に育てられたことで共通する特徴が見られます。 考え方や感じ方のパターンや、ときには人格にも影響が及ぶケースもあります。

この気持ちを誰にもわかってもらえないという絶望
生まれてこなければよかった、という後悔や罪悪感
強いこだわりや強迫観念
何事も自分で決められない、選べない迷いと不安


ここでは、多くのアダルトチルドレンが抱える4つの苦悩、①トラウマ反応(PTSD)②生きづらさ③いい子、正しい子、しっかりした子④自分を愛せないことについて掘り下げてみましょう。

 

関連記事⇒アダルトチルドレン(AC)6タイプ診断|2分でわかるセルフチェックリスト

 

 

1. トラウマ反応(PTSD)

ダメージ伴う体験がくり返されたり、ダメージそのものが大きすぎた結果、その体験は心の傷、トラウマ(心的外傷)となります。自分の意志とは無関係に起こる身体症状やフラッシュバックなどトラウマ反応に悩まされる人も少なくありません。自力での回復は難しく、カウンセリングやセラピー、治療が必要になるケースもあります。

【参考記事】

トラウマとは? 知ってるようで知られていない厄介な事実

 

1回1回の衝撃は小さくても、逃げ場のない場所で、長期間にわたってくり返し行われる過酷な体験(長期反復性外傷体験)によって、ダメージが蓄積されることも、PTSDの原因となります。これが「複雑性PTSD(C-PTSD/Complex PTSD」。機能不全家族で育つアダルトチルドレン(AC)を蝕むトラウマはこのタイプ。発見されにくい、理解されにくい、厄介なものなのです。

 

機能不全家族で育った子どもたちは多くの場合、毒親から受けた理不尽な経験を、理不尽であるにもかかわらず、「自分のせい」「自分が悪い」と思い込んでいます。毒親が子どもたちにひどい仕打ちをする理屈は「お前のせい」「お前が悪い」であり、そんな「お前のために」教育や躾をしているのだと主張し続けてきました。毒親に反論することはもちろん、自分を認めることも、許すこともできません。当時の恐怖や悲しみ、傷ついた感情とともに甦ってくるトラウマ体験の記憶によって、苦痛を味わい続けます。

 

長い間この体験をしていると「安全だ」と思える場がなくなって落ち着くことができません。過去の体験に抗えなかった自分への無能感、無力感、「消えない傷をつけられた、汚された、汚い」といった羞恥心に苛まれ、人生に希望を抱くことができません。「消えてなくなりたい」「誰も知らないところへ行きたい」「生まれてこなければよかった」という思いを抱くのはこのためです。こんな思いから、うつ、パニック障害、摂食障害などを発症したり、ときには絶望から突発的に自己破壊的な衝動に駆られたり、実際に自傷行為に至ったりする場合もあります。

 

2. 生きづらさ

アダルトチルドレン(AC)が感じる生きづらさの要因はさまざまで、ACに共通する特徴として感じ方・考え方・行動のパターンが挙げられています。これらの特徴が形作られたのは、幼い頃から長い年月わたって毒親から行われた感情の抑圧と人格否定、そして刷り込みが原因です。

 

ACの多くは、「十分に愛され、受け入れられなかった」「一人の人間として扱われなかった」ことで「親を許せない感情」と「自分を許せない感情」を持っています。その悲しみや怒り、恨み、恐れなどの感情は長い間、心の深く閉じ込めて生きてきました。こうした感情に本人が気づいていないことすらあります。抑圧された感情は、本人がまったく意図しない形で吐き出されます。加えてACは、親の価値観・考え方・行動のパターンが知らず知らずのうちに自分の中に刷り込まれています。こだわりや極端な考え、過剰な反応をしがちなのはその影響です。本人がまったく望まない行動に駆り立てられ、ほかのみんなのように考えられないギャップに苦しむことになります。親からの否定や虐待によって、自己肯定感は乏しく、うまくできない自分への劣等感や怒り、自己嫌悪、人生への失望や諦めを抱きます。

 

出来事や人物をストレートに受け止められず、「これは何かあるに違いない」と疑心暗鬼になり、喜びや楽しい、うれしいといったプラスの感情を表現することに臆病になります。それが卑屈な態度をとらせてしまったり、とっつきづらい印象を与えたりします。

 

潜在的な「許せない」感情から、他者の失敗や過ちを許すことができない狭量さが生まれることもあります。ただ、その感情を公の場で露わにすることはありません。そのため不満は昇華されることなく溜まっていくことになります。少ないのですが、親しい人たちとの間ではぽろっと出ることもあります。そんなとき、「頑固だね」「こだわりが強いね」と相手から指摘されることもあるでしょう。

 

毒親のタイプが [不在型][搾取型] の子どもたち

子どもは親・家のために尽くし仕えなければならないという価値観を刷り込まれています。彼らにとって応援=甘えで、適切に他者に頼ったり、手伝ってもらうことができません。SOSを出したり、サポートを求めることは許されないと思い込んで、一人で抱え込んだり、暴走して事態を悪化させることがしばしばあります。自分はダメな人間なので、「他者から支援を受けるに値しない存在」だと思い込んでいるのです。近い関係にある相手には「なぜあなたはそんな甘えが許されると思うのか」と、サポートを得られなかった恨みを八つ当たりをすることもあります。頼る/頼られるといった関係性や他者の目を恐れ、人間関係では距離を置きがちです。ときには、人との交流に強い不安や恐怖を覚える社会不安や親密になることを避ける回避障害の傾向として現れることがあります。

→[不在型毒親の特徴][搾取型毒親の特徴

 

毒親のタイプが [支配型] [虐待型] の子どもたち

子どもは親の欲求を満たさなければならないという価値観を刷り込まれています。親からの支配や洗脳された影響で、自分で意思決定ができません。大人になってからもその影響が残り、意思決定では「母(父)がこう言うから」など親や家の意向を守ろうとします。親・家を頼れないときは、常識や倫理、法律、第三者の考えに依存します。自分の意見や気持ちに希薄なので、他者に頼ったり借りた理論で武装するため、理屈っぽかったり、批判的だったりしがちです。また、借りものの理論に則って、白か黒か、ゼロか100かで結論づけたがり、自分も相手も追い込むことが多いでしょう。ユーモアや冗談を介さず笑いのツボがわからなかったり、融通が利かなかったりするため、自分でも相手からも「つきあいづらい」と感じるかもしれません。

→[支配型毒親の特徴][虐待型毒親の特徴

 

3. いい子、正しい子、しっかりした子

表に出せない感情を抱えながら「成績がよい」「礼儀正しい」「責任感がある」「しっかりしている」など、同級生の父兄や学校の先生など周囲の大人から「いい子」と評価を受けるアダルトチルドレン(AC)は少なくありません。このタイプは相手の期待に応えるために努力を重ね、不平不満を言わない忍耐強さがあり、謙虚で遠慮がちです。

 

ほかの子がはしゃぐような場面でも自制心があり、他の子から「いい子ぶって」などと揶揄されても、同調しません。むしろ、同年代の子たちとつるんだり、軽口を交わすのは苦手で、交友関係は限定的です。

 

大人になってからも「いい子」の殻を破ることができず、苦悩します。組織や人間関係に過剰に適応しようと努めるACは、「正しい自分」「デキる自分」であることを自分に課し、必要以上にがんばってしまう――その傾向に自分で気づきながら、止めることができません。その結果、過重労働やワンオペ育児にハマり、健康状態を崩すまで自分を追い込んでしまうこともあります。

 

一方、他者に対して「なぜ、努力をしないのか?」「なぜ、正しくあろうとしないのか?」と批判的な目を向けることもあります。職場などオフィシャルな場で相手に伝える必要性がある場合、適切に表現することに不慣れなACは、言葉や態度がきつく、冷たいものになるか、あるいはまったく相手に言えないかに二極化します。反面、他人の目を恐れ、気を使いすぎて疲れ果てて傷ついてしまうなど、人間関係に苦手意識を持ち、「言いたいことが言えない」状況に追い込まれます。

 

毒親のタイプが [支配型] [虐待型]の子どもたち

このタイプのなかには、よい成績をとったり、親にとって自慢の子どもであることで、家庭内や両親の「不仲を解決しよう」と努力してきた子が多くみられます。搾取型毒親に贔屓され、たっぷり可愛がられて育つ愛玩子の中にも、よい成績をとったり、自慢の子はみられますが、支配型・虐待型毒親の子どもとはまったく異なります。愛玩子がワガママを許してもらったり、甘やかされて自分の好きなことを楽しむのとは逆に、支配型・虐待型毒親の子どもたちにとって、よい成績を獲得したり親の自慢になることは「ノルマ」です。親をゴキゲンにすることで両親の諍いを防ぎ、家庭内に平和をもたらすことが目的で、自己実現ではありません。しかし、愛玩子の優秀さが長続きしないことが多い一方、支配型・虐待型毒親の優秀な子どもたちは危機感や目的意識で邁進し、その道のエリートまで上り詰めることも少なくありません。元アメリカ大統領のビル・クリントンがその代表例です。

→[支配型毒親の特徴][虐待型毒親の特徴

 

毒親のタイプが [不在型][搾取型] の子どもたち

この毒親は求める「いい子」像は、親の手を煩わせない、親に都合のよい自立した子です。「お母(父)さんはいつも忙しい」「お前を育てるためにこんなに大変だ」というサインを出し、頼りたい、甘えたい、気づかってほしいという子どものニーズをシャットアウトします。一方、家の手伝いは何でもして、親の負担を軽くすることを強いられます。
不在型毒親は、幼い頃から一人でいること自分のことは何でも自分でできる「しっかりしている子」を求めます。子どもの悩みに耳を貸すことはありません。搾取型毒親にとって親の懐を傷めず、収入源になる「うまみのある子=いい子」です。子ども自身がすべて自分で賄うことを求められます。愛玩子には時間もお金もたっぷりかけるのに、搾取子には何も与えません。学費など「高いから出せない」、一人暮らしは「金がかかるからやめろ」と言う反面、家にお金を入れることを要求します。

→[不在型毒親の特徴][搾取型毒親の特徴

 

4. 自分を愛せない

アダルトチルドレン(AC)は一見、利他的に見られます。自分のことより、相手に尽くし、喜ばれたい、役に立ちたいと考え、行動するからです。ときには顔を合わせたこともない誰かのために苦労することすら、厭いません。しかし、そういった行動の根底には「自分を大切にできない=大切にしてはいけない」という歪んだ理念があります。

 

家族や友人、お客様など大切な人のことは、相手の好き嫌いや趣味に合うものなど熟知しており、事細かに配慮できますが、「あなたの好物は?」と尋ねられるとわからなかったりします。誰かのための食事を用意するとき、好き嫌いから栄養バランスまで気を配りますが、自分のための食事となるとおざなりでどうでもよかったりします。「あなたが喜ぶことがわたしの喜びなの」という人もいます。それは、自分を喜ばせることができないゆえの代償行為にすぎません。

 

これは無条件に愛され、守られる体験がなかった弊害ともいえます。毒親育ちの子どもたちにとって、愛情とは「親の言う通りにする」「親の機嫌を取る」ことではじめて得られるもの、そんな条件付きの愛情が当たり前だからです。そのため、人に尽くしたり、献身することは、嫌われずに済む、自分の立場を守るといった安全確保の手段に過ぎません。

 

自分にやさしくすること、自分を大事にすることは、「甘え」「わがまま」と考えます。自分のような人間にそんなことは許されないと自分を厳しく律し、ときに虐げます

 

毒親のタイプが [支配型] [搾取型] の子どもたち

自己実現している人を「ああ、いいなあ」と強く羨む一方、自分はそうなりたいけど、そうなってはいけないと思い込んでしまいます。自分も思いっきりやりたいことをやってみたいと憧れるのですが、どうしたらいいのかわかりません。当たり前です。何かやりたいと思ったことをすべて取り上げられてきたのですから。取り上げられた習慣だけが身について離れません。やりたいことに出会ったとしても、それを取り上げられること、取り上げられて落胆することを怯えるあまり、最初から諦めてしまいます。たとえ親が死んで自由になったとしても、こんな観念的な思いから、自分の喜びを否定します

→[支配型毒親の特徴][搾取型毒親の特徴

 

毒親のタイプが [虐待型] [不在型] の子どもたち

危機的な状況で守ってもらえないこと、理不尽に傷つけられることが悪い意味で「慣れっこ」になっています。「自分はこういう目に遭って当然」「自分はこういう扱いを受けべき存在」と諦めたり、信じ込んだりしています。交際相手や配偶者に加虐タイプ、モラハラタイプを選び苦労することも少なくありません。そんな状況こそ自分の居場所と勘違いして、なかなか変えよう、逃げようとできないからです。

→[虐待型毒親の特徴][不在型毒親の特徴

 

毒親の支配から脱却する第一歩は
「自分の人生に気づくこと」

 

今ではポピュラーな「毒親」という言葉、その名付け親はアメリカのセラピスト、スーザン・フォワードです。1989年に発表された機能不全家族についての著書「毒になる親」(日本では1999年に訳書が、2021年に完全版が出版)で世に出た造語です。毒親は、けっして今、始まった問題ではないのです。

 

スーザン・フォワード『毒になる親 完全版』(毎日新聞出版)

 

毒親の目的は、単に虐げることではありません。子どもの人生を支配しつづけることです。進学、就職、結婚、あるいは親の死によって別れることはありますが、毒親の支配は長く続き、負の連鎖を引き起こします。独立して、新たな家庭を築いても、知らず知らずのうちに、毒親育ちの子どもが、共依存、モラハラ、DVを起こす、あるいは自らが毒親になってしまうこともままあります。

 

毒親の支配、負の連鎖を断ち切る第一歩は、ただちに「自分の人生は自分のものだと気づくこと」です。これは、リアルトレジャーのACカウンセリングで行う「自己奪還の5つのステップ」のファーストステップになります。あなたの人生は、親とは無関係に、あなただけのものなのです。このあと毒親との距離感や、関係性を理解するステップに続きますが、その前に、「自分」という基礎づくり。そのためには、毒親があなたにしたように、あなた自身を粗末に雑に乱暴に邪見に扱ってはいけません。やさしく労わって、自分を大事にしてください。

 

あなたは、いつでも人生を自由に選ぶことができます。

 

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[AC/毒親チェック]

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