毒親に育てられた子どもたち[アダルトチルドレン(AC)]の4つの苦しみ
毒親に育てられたアダルトチルドレン(AC)には特徴があり、共通の不都合を抱えています。多くのACが抱える4つの苦悩、①トラウマ(PTSD)、②生きづらさ、③いい子症候群、④自尊感情の欠如について掘り下げてみましょう。
毒親に育てられた人の特徴
アダルトチルドレン(AC)の苦悩はさまざまですが、毒親に育てられたことで共通する特徴が見られます。 たとえば、自分の親が「毒親だ」と気づいたのに、親元から離れられないアダルトチルドレン(AC)は少なくありません。十分、経済性も生活力を獲得し、親の力なしに暮らしていけるにもかかわらず、です。ほかにもよく見られる特徴には次のようなものがあります。
自尊感情が低く、自信がない
この気持ちを誰にもわかってもらえないという絶望
生まれてこなければよかった、という後悔や罪悪感
強いこだわりや強迫観念
安心できる相手への批判や攻撃、感情の爆発
何事も自分で決められない、選べない迷いと不安
本音や本心をオープンにできない
他人の目を気にして、顔色をうかがう
他人から認められたいが認められないという失望
イジメや搾取のターゲットになりやすい
こういった考え方や感じ方の特徴の根底には、ACのほとんどが抱える次の4つの苦悩があります。
1. トラウマ(PTSD)
ダメージ伴う体験がくり返されたり、ダメージそのものが大きすぎた結果、その体験はトラウマ(心的外傷)となります。自分の意志とは無関係に起こる身体症状やフラッシュバックなどトラウマ反応に悩まされる人も少なくありません。自力での回復は難しく、トラウマ反応が1か月以上続き、治療を必要とするほど重症化するのが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)という病気です。
【参考記事】
1回1回の衝撃は小さくても、逃げ場のない場所で、長期間にわたってくり返し行われる過酷な体験(長期反復性外傷体験)によって、ダメージが蓄積されることも、PTSDの原因となります。これが「複雑性PTSD(C-PTSD/Complex PTSD)」です。機能不全家族で育つアダルトチルドレン(AC)を蝕むトラウマはこのタイプ。発見されにくい、理解されにくい、厄介なものなのです。
ACは、毒親から理不尽な経験を受けたにもかかわらず、「自分のせい」「自分が悪い」と思い込んでいます。毒親の理屈は「お前のせい」「お前が悪い」であり、「お前のために」教育や躾をしているのだと主張し続けてきました。
子どもは小さく弱いため、毒親に抗うことはもちろん、自分を守ることもできません。長い間、恐怖や悲しみ、傷ついた感情とともにあり、苦痛を味わい続けます。本来、子どもが安心・安全を学ぶはずの家庭はACにとって戦場でした。そのため、ACは「安全」と思える居場所を見つけること、築くことが不得手で、自分を鎮め、癒すことができません。
過去の体験に抗えなかった自分への無能感、無力感、「消えない傷をつけられた、汚された、汚い」といった羞恥心に苛まれ、人生に希望を抱くことができません。「消えてなくなりたい」「誰も知らないところへ行きたい」「生まれてこなければよかった」という思いを抱くのはこのためです。こんな思いから、うつ、パニック障害、摂食障害などを発症したり、ときには絶望から突発的に自己破壊的な衝動に駆られたり、自傷行為をくり返すケースも珍しくはありません。
2. 生きづらさ
「アダルトチルドレン」の名づけ親であるジャネット・ウォイティツは、AC(アダルトチルドレン)の考え方や感じ方、行動について13の特徴を挙げています。これらがACの「生きづらさ」の要因といえます。これらの特徴が形作られたのは、幼い頃から長い年月わたって毒親から行われた感情の抑圧と人格否定、そして刷り込みが原因です。自己肯定感は乏しく、うまくできない自分への劣等感や怒り、自己嫌悪、人生への失望や諦めを抱きます。
ACには、知らず知らずのうちに親の価値観・考え方・行動のパターンが刷り込まれています。自分でも不可解なこだわりや極端な考えは、親から受け継いだものです。一方、親から「十分に愛され、受け入れられなかった」「一人の人間として扱われなかった」悲しみや怒り、恨み、恐れなどの感情を長い間、心の深く閉じ込めて生きてきました。こうして抑圧された感情は自覚されることもなく、本人がまったく意図しない形で突発的に吐き出されます。過剰な反応をしがちだったり、本人がまったく望まない行動に駆り立てられ、ほかの人と同じように考えられないギャップに苦しむのはその影響です。
出来事や人物をストレートに受け止められず、「これは何かあるに違いない」と疑心暗鬼になり、喜びや楽しい、うれしいといったプラスの感情を表現することに臆病です。それが卑屈な態度をとらせてしまったり、とっつきづらい印象を与えたりします。
潜在的な「許せない」感情から、他者の失敗や過ちを許すことができない狭量さが生まれることもあります。感情を抑圧するのはACのお家芸ですから、不満は昇華されることなく溜まっていきます。少ないながら、親しい人たちとの間ではぽろっとこぼれることもあります。そんなとき、「頑固だね」「こだわりが強いね」と指摘されるかもしれません。こうした安心できる人間関係のなかで、自分への理解や受容を深めていくことができれば、ACの生きづらさも徐々に軽減されていくのですが。
毒親のタイプが [不在型][搾取型] の子どもたち
子どもは親・家のために尽くし仕えなければならないという価値観を刷り込まれています。このタイプにとってサポート=甘え。自分は「他者から支援を受けるに値しない存在」と思い込み、SOSを出したり、助けを求めることができません。一人で抱え込んだり、暴走して事態を悪化させることがしばしば。ときには、サポートを得られない恨みを「なぜあなたはそんな甘えが許されると思うのか」と、近しい相手に八つ当たりすることもあります。そのせいか、頼る/頼られる関係性を築くのを恐れ、人間関係では距離を置きがちです。人との交流に強い不安や恐怖を覚える社会不安や親密になることを避ける回避障害の傾向として現れることがあります。
毒親のタイプが [支配型] [虐待型] の子どもたち
子どもは親の欲求を満たさなければならないという価値観を刷り込まれています。親からの支配や洗脳された影響から自分で意思決定ができず、親や家の意思に依存します。大人になってからもその影響は残り、親・家を頼れないときは、常識や倫理、法律、第三者の考えに依存します。自分の意見や気持ちに希薄で、他者の受け売りの理論で武装するため、理屈っぽく批判的です。また、白か黒か、ゼロか100かで結論づけたがり、自分も相手も追い込むことが多いでしょう。ユーモアや冗談を介さず笑いのツボがわからなかったり、融通が利かなかったりするため、自分でも相手からも「つきあいづらい」と感じるかもしれません。
3. いい子症候群
表に出せない感情を抱えながら「成績がよい」「礼儀正しい」「責任感がある」「しっかりしている」など、同級生の父兄や学校の先生など周囲の大人から「いい子」と評価を受けるアダルトチルドレン(AC)は少なくありません。このタイプは相手の期待に応えるために努力を重ね、不平不満を言わない忍耐強さがあり、謙虚で遠慮がちです。
ほかの子がはしゃぐような場面でも自制心があり、他の子から「いい子ぶって」などと揶揄されても、同調しません。むしろ、同年代の子とつるんだり、軽口を交わすのは苦手で、交友関係は限定的です。
大人になってからも「いい子」の殻を破れません。組織や人間関係に過剰に適応しようと努めるACは、「正しい自分」「デキる自分」であることを自分に課し、必要以上にがんばってしまう――その傾向に自分で気づきながら、止めることができません。その結果、過重労働やワンオペ育児にハマり、健康状態を崩すまで自分を追い込んでしまうこともあります。
一方、他者に対して「なぜ、努力をしないのか?」「なぜ、正しくあろうとしないのか?」と批判的な目を向けることもあります。相手に伝える必要性がある場合、適切に表現することに不慣れなACは、厳しく非難するか、まったく言わないかのいずれかに二極化します。いずれにせよ、他人の目が気になり、気を使いすぎて疲れ果てて傷ついてしまうなど、人間関係でストレスを溜めがちです。
毒親のタイプが [支配型] [虐待型]の子どもたち
このタイプには、よい成績をとるなど親にとって自慢の子どもであることで、家庭の平和維持活動に尽力してきた子が多くみられます。搾取型毒親に贔屓され、たっぷり可愛がられて育つ愛玩子の中にも自慢の子はみられますが、支配型・虐待型毒親の子どもとはまったく異なります。愛玩子が自分の好きな道で楽しみながら自己実現するのとは逆に、支配型・虐待型毒親の子どもたちにとってよい成績を獲得したり親の自慢になることは「ノルマ」です。親をゴキゲンにすることで両親の諍いを防ぎ、家庭内に平和をもたらすことが目的で、自分のためではありません。愛玩子の優秀さが長続きしないことが多い一方、支配型・虐待型毒親の優秀な子どもたちは危機感や目的意識で邁進し、その道のエリートまで上り詰めることも少なくありません。元アメリカ大統領のビル・クリントンがその代表例です。
毒親のタイプが [不在型][搾取型] の子どもたち
この毒親が求める「いい子」像は、親の手を煩わせない、親に都合のよい自立した子です。「お母(父)さんはいつも忙しい」「お前を育てるためにこんなに大変だ」というサインを出し、頼りたい、甘えたい、気づかってほしいという子どものニーズをシャットアウトします。一方、家の手伝いは何でもして、親の負担を軽くすることを強いられます。不在型毒親は、幼い頃から一人でいること、自分のことは何でも自分でできる「しっかりしている子」を求めます。搾取型毒親が望むのは、親の懐を傷めず、収入源になる「うまみのある搾取子」です。子ども自身がすべて自分で賄う自立を求め、愛玩子には時間もお金もたっぷりかける一方、搾取子には何も与えません。学費など「高いから出せない」、一人暮らしは「金がかかるからやめろ」と言う反面、家にお金を入れることを要求します。
4. 自尊感情の欠如
アダルトチルドレン(AC)は一見、利他的に見られます。自分のことより、相手に尽くし、喜ばれたい、役に立ちたいと考え、行動するからです。ときには顔を合わせたこともない誰かのために苦労することすら、厭いません。しかし、そういった行動の根底には「自分を大切にできない=大切にしてはいけない」という歪んだ理念があり、自分を愛することができません。
家族や友人、お客様など大切な人のことは、相手の好き嫌いや趣味に合うものなど熟知しており、事細かに配慮できますが、「あなたの好物は?」と尋ねられるとわからなかったりします。誰かのための食事を用意するとき、好き嫌いから栄養バランスまで気を配りますが、自分のための食事となるとおざなりでどうでもよかったりします。「あなたが喜ぶことがわたしの喜びなの」という人もいます。それは、自分を喜ばせることができないゆえの代償行為にすぎません。
これは無条件に愛され、守られる体験がなかった弊害ともいえます。毒親育ちの子どもたちにとって、愛情とは「親の言う通りにする」「親の機嫌を取る」ことではじめて得られるもの、そんな条件付きの愛情が当たり前だからです。そのため、人に尽くしたり、献身することは、嫌われずに済む、自分の立場を守るといった安全確保の手段に過ぎません。
自分にやさしくすること、自分を大事にすることは、「甘え」「わがまま」と考えます。自分のような人間にそんなことは許されないと自分を厳しく律し、ときに虐げます。
毒親のタイプが [支配型] [搾取型] の子どもたち
自己実現している人を強く羨む一方、自分はそうなってはいけないと思い込んでいます。思いっきりやりたいことをやってみたいと憧れるのですが、どうしたらいいのかわかりません。当たり前です。何かやりたいと思ったことをすべて取り上げられてきたのですから。取り上げられた習慣だけが身について離れません。やりたいことに出会ったとしても、それを取り上げられること、取り上げられて落胆することを怯えるあまり、最初から諦めてしまいます。たとえ親が死んで自由になったとしても、こんな観念的な思いから、自分の喜びを否定します。
毒親のタイプが [虐待型] [不在型] の子どもたち
危機的な状況で守ってもらえないこと、理不尽に傷つけられることが悪い意味で「慣れっこ」になっています。「自分はこういう目に遭って当然」「自分はこういう扱いを受けべき存在」と諦めたり、信じ込んだりしています。交際相手や配偶者に加虐タイプ、モラハラタイプを選び苦労することも少なくありません。居心地が悪くても、そんな状況・場所に慣れ親しんでいるため、自分の居場所と勘違いして、変えよう、逃げようとする気持ちが起きないのです。
毒親の支配から脱却する第一歩は 「自分の人生に気づくこと」
今ではポピュラーな「毒親」という言葉、その名付け親はアメリカのセラピスト、スーザン・フォワードです。1989年に発表された機能不全家族についての著書「毒になる親」(日本では1999年に訳書が、2021年に完全版が出版)で世に出た造語です。毒親は、今、始まった問題ではないのです。
毒親の目的は、単に虐げることではありません。子どもの人生を支配しつづけることです。進学、就職、結婚、あるいは親の死によって別れることはありますが、毒親の支配は長く続き、負の連鎖を引き起こします。独立して、新たな家庭を築いても、知らず知らずのうちに、毒親育ちの子どもが、共依存、モラハラ、DVを起こす、あるいは自らが毒親になってしまうこともままあります。
毒親の支配、負の連鎖を断ち切る第一歩は、ただちに「自分の人生は自分のものだと気づくこと」です。これは、リアルトレジャーのACカウンセリングで行う「自分を取り戻す5つのステップ」のファーストステップになります。あなたの人生は、親とは無関係に、あなただけのもの。このあと毒親との距離感や、関係性を理解するステップに続きますが、その前に、「自分」という基礎づくり。そのためには、毒親があなたにしたように、あなた自身を粗末に、雑に、乱暴に、邪見に扱ってはいけません。やさしく労わって、自分を大事にしてください。
「自分を取り戻す5つのステップ」については、近日中にブログ記事を公開する予定です。リアルトレジャーのSNSでお知らせしますので、フォローしてお待ちください。
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