アダルトチルドレン(AC)が失われた“自分”を取り戻すステップ
更新日:8月27日
アダルトチルドレン(AC)は機能不全家族で大人の役割を担わされて育った人を意味します。
育成過程で受けたトラウマを持ち、アイデンティティの問題や生きづらさ、人間関係といった共通する問題に直面し、ときに死にたくなるほどの苦悩を抱えます。最近では「毒親育ち」「親ガチャ失敗」を自覚される方はACかもしれません。
機能不全家族という過酷な環境を生き抜いたサバイバーであるACが、自分を取り戻すためには、自分が何者なのか、この生きづらさの正体は何なのかなど、自分についてよく知る必要があります。ただし、ネガティブな面ばかりでありません、ACだからこそ身に着けた武器、他者とは比較にならない強靭さをACは携えています。自分を取り戻し、幸せな人生を歩むリソースは備わっているのです。
「自分が何者かわからない」 行方不明のアイデンティティ
親が子どもを育てるという機能が果たされない機能不全家族で生まれたアダルトチルドレン(AC)は、親に代わって親の役割を遂行しなければなりませんでした。さもなければ、認めらてもらえない、愛してもらえない、捨てられてしまうという恐怖や危険と隣り合わせだったからです。そこで人生のかなり早い段階からACは本来の自分を押し殺し、期待された役割を演じることを学習し、機能不全家族に適応しました。優等生(ヒーロー)や相談役(プラケーター)、あるいは叩かれ役(スケープゴート)など、ACが演じる役割は数パターンあることが知られています。
与えられた役割の思考や行動パターンを演じるうちに、いつしか自分を表現しなくなり、やがて、ACは自分を見失ってしまいます。その結果、健全にアイデンティティを確立させることができませんでした。ACは「自分が何者か」「どこに自分の居場所があるか」わかりません。だから迷いや悩みが多く、自分の人生を歩むことに疲れ果て、ときにあきらめてしまうのです。
アダルトチルドレン(AC)の生まれた背景
「アダルトチルドレン」という言葉は、1970年代からアメリカのセラピストたちの間で生まれます。当時、拡大するアルコール依存症とともに、患者と共依存関係にある配偶者に育てられた子どもたちがACoA(Adult Children of Alcoholics/アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス)と呼ばれ、問題になっていました。
アルコール依存をはじめとする嗜癖の研究家であり、治療家でもあったジャネット・G・ウォイティツが1983年に発表した『Adult children of alcoholics』(邦訳:アダルト・チルドレン―アルコール問題家族で育った子供たち)でアダルトチルドレンの概念が広く知られるようになりました。ACの回復のためにアルコール依存者家庭の典型的なパターンについて書かれた同書はミリオンセラーになり、6か国語に翻訳されています。
現在は、アルコール依存症のみならず、身体的・精神的・性的な虐待があった機能不全家族で育った子どもたち、ACoD(Adult Children of Dysfunctional families/アダルトチルドレン・オブ・ディスファンクショナル・ファミリーズ)も含めACと略されています。
「生きづらさの正体」
アダルトチルドレンの特徴とは?
ジャネット・ウォイティツは、アダルトチルドレン(AC)と呼ばれるようになったのは「5歳のときの情緒と行動が、55歳になっても同じように、突然ひょっこり顔を出す」ことが由来だと述べています。そんなACの典型的な考え方や感じ方、行動を、ウォイティツは13の特徴にまとめました。これこそ、まさに生きづらさの正体といえるでしょう。
ジャネット・ウォイティッツによるACの特徴
自分の思考や行動に「これでいい」という確信が持てない
最初から最後までやり遂げることが困難
本当のことを言ったほうが楽なときでも嘘をつく
自分に情け容赦ない批判を下す
楽しむことがなかなかできない
まじめすぎる
親密な関係を持つことが非常に難しい
コントロールする自信がない変化に過剰反応する
他人から肯定され、受け入れられたいとつねに求める
他人は、自分とは違うといつも感じている
つねに責任をとりすぎるか、とらなさすぎる
過剰に忠実で、無価値とわかっていてもこだわり続ける
衝動的で、他の選択肢を考えず一つのことに自らを閉じ込める
このほか、複数の研究者が共通して挙げているACの特徴には次のようなものがあります。
自己評価が低く、判断に自信が持てない
一人の人間として尊重される実感を十分に得られなかったアダルトチルドレン(AC)は、「自分を大切にする、労わる、愛する」という意識を持てません。機能不全家族では、不都合な事実の否定・否認がくり返し行われます。たとえば、親が暴力を振るうことを「あれは躾。お父(母)さんがストレスを抱えていることをわかってあげなくちゃいけなかったのに、自分が悪かった」と解釈し、「親がひどいことをした」という事実を脚色し、歪めるのです。子ども時代のこの習慣のせいでACは、今起きている出来事をそのまま認識することが難しいのです。親にとって都合のよいストーリーを創作するのは得意ですが、ジャーナリスティックに事実をとらえることができません。その結果、自分の判断に自信がもてず、他人の意見や評価に依存することになります。
自分の感情や感覚に気づけない
感情を封印することで機能不全家族という過酷な環境に適応してきたアダルトチルドレン(AC)は、「今、自分が何を感じ、どんな気持ちなのか」という感覚が麻痺してます。感情を適切に表現ができません。たとえば、他人からのひどい仕打ちをされても悲しみや痛みに鈍感なため、懲りずに関係を続けていたりします。「一緒にいるから好きなんだ」と感情を勘違いしたり、すり替えたりします。「好き」「心地いい」という感覚も薄いため、幸せになかなか近づけません。「何かヘンだ!」という危機感にも危険にも慣れ過ぎていてリスク回避ができず、同じ失敗や危険をくり返しがちです。
相手の期待に応えようとする
親の期待や要望に応えることで生き抜いてきたアダルトチルドレン(AC)は、自分の意思より相手や周囲の人の期待を優先します。いつも相手が何を望んでいるのかを察し、周囲からどんな評価を受けるかを気にします。そのため、はっきりした自己主張や「NO」の表明ができません。否定した相手から拒否され、見放されることを恐れるのです。相手に合わせた都合のよいストーリーのために自分の意思とは異なる小さな嘘を吐き、そんな嘘を重ねるうちに言動の不一致を招いたりもします。
自分を虐げ、トラブルや危険に身をさらす
情け容赦のない自己批判をする一方、自分を犠牲にしてまで相手の世話を焼きます。家庭で「安全」を味わうことができなかったアダルトチルドレン(AC)は、家庭と同じ不安定で危険が伴う環境や人間関係を無意識に選んでしまいます。その結果、自ら不幸になる道を選んだり、自分で幸せの芽を摘んでしまうこともしばしば。自己破綻へと自分を追い込んでしまうことも少なくありません。他人の言いなりになりやすく、事件や犯罪にも巻き込まれたり、虐めや搾取、詐欺のターゲットにされやすい傾向があります。たとえ理不尽なひどい仕打ちを受けたときですら「自分はこれが当たり前なんだ」と納得してしまうのです。
物事を極端にとらえ、過剰に行動する
親が絶対的存在だったアダルトチルドレン(AC)にとって、すべての物事を「白か黒か」「善か悪か」の二元論でとらえることが習慣づけられています。その結果、「自分が正しくて相手が間違っている」とか「すべては自分のせいだ」と思い込みます。その結果「全責任を負うかまったく無責任」「妄信かマル無視」といった極端な思考から過剰な行動につながります。言われたことに過剰に忠実だったり、自分の手に負えない事態にありえないほど混乱してパニックや思考停止を起こしたりします。過剰な行動の結果、自暴自棄に走ることや心身の健康を損なうことを慢性的にくり返す人もよく見られます。
罪悪感に衝き動かされ、必死にがんばる
親や家族がうまくいかないのは「自分のせい、自分の努力が足らないからだ」と信じ、努力を続けたアダルトチルドレン(AC)は「自分がもっとがんばれば、状況はきっとよくなる」という妄想に囚われています。家族の外での人間関係でも、相手の抱えている問題やチームの問題までも「自分のせいだ」と罪悪感が発動し、必死に尽くすのです。毒親に反論する、家族から離れる、やっと自由になれるといったとき、罪悪感は必ず襲来し、そんな考えをもったことを後悔させ、翻意させます。罪悪感によってACは、自分ががんばれば解決する妄想から逃れられませんし、人に尽くす努力もやめられません。
親密な関係を築くのが難しい
毒親と共依存関係にあったアダルトチルドレン(AC)は、他人と自分の境界線がはっきりしていません。相手の問題に入り込んだり、相手が落ち込むと自分も凹んだりします。健全な距離感がとれず、愛情は相手にしがみつくことだと勘違いしている節があります。一途に献身する一方、嫉妬深く、相手を束縛します。「愛されている」という実感を子ども時代に持てなかったACにとって、ちょうどいい距離で他人と愛しあうことは至難の業です。密着できる相手を得たいがために恋愛遍歴を重ねるか、あるいは、親密になることを恐れて回避するかのいずれかになります。
アダルトチルドレンの“強み”を活かす
自己否定的で自分に自信が持てず、周囲の他者を気にしすぎるアダルトチルドレン(AC)にとって、自分の長所や強みを見出すことはなかなか難しいことです。しかし、過酷な体験から得た力や才能がACににはたしかに備わっています。それこそが、サバイバーとして生き残った証です。今は、その存在を信じられないかもしれませんが、この力や才能で自分の人生を取り戻し、開花させたACは決して少なくありません。
桁違いの逆境での強さ
ほかの子がのびのびと楽しんでいたとき、アダルトチルドレン(AC)は「できない」「疲れた」「やりたくない」と弱音も吐くことすら許されず、努力を重ねてきました。倒れながらも燃え尽きず、生き残ったACはアスリートの英才教育を受けたようなものです。不可能を可能にし、無理を承知でぶち当たり、打ち負かす不屈の忍耐力と精神力が備わりました。ほかにも突破力、集中力、忠誠心、使命感、利他主義など挙げればきりがありません。
機能不全家族での幼少期はまさにVUCAの時代。変動性・不確実性・複雑性・曖昧性をすべて経験したサバイバーには、キャリアや人生上のトランジション(転機)を必ず勝ち残る知恵と戦略があります。ダメージを受けたときのレジリエンス(回復力)は言うまでもありません。
ただし、このエネルギーの使い方や、努力の方向性については注意が必要です。思い込みで誤った使い方をすると大惨事を引き起こしかねません。自分を取り戻すステップで、正しい使い方を身に着けていきましょう。
クリエイティブな才能
ACカウンセリングのクライエントさんに、クリエイティブな才能の持ち主が多いということは早い段階から気づいていました。アダルトチルドレン(AC)は他者とのコミュニケーションや親密な人間関係を構築することは、たしかに苦手ですが、自分が愛するファンタジーの世界を構築することには非常に長けています。過酷な幼少期に、心が慰められた出来事や出会い、感動体験、自分を避難させた安全地帯といったリソースが、ACの生きる支えとなっていたのでしょう。ACカウンセリングでは、子ども時代に出会ったリソースを大切にし、趣味として長く続けている人、お仕事にしてステップアップした人、ともに多くいらっしゃいました。ジャンルは多岐にわたり、たとえば、音楽、読書・執筆、アート・デザイン、プログラミング、語学など。表現を楽しんだり、発表することで、苦手だった人間関係を構築される人もいます。
2018年に発表されたカリフォルニア州立大学の研究によれば、俳優・監督・ダンサー・デザイナー・ミュージシャンなどプロのパフォーマーは、被虐体験がある、機能不全家族で育つといった「逆境的児童期体験(ACE)」レベルの高い人が多いことがわかりました。研究者は「逆境的児童期を経験した大人のパフォーマーは創造的プロセスを認識したりその価値を見出したりしやすく、これらのグループの創造的プロセスを楽しむ能力は、『苦境から立ち直る力』を示しているのかもしれない」としています。
アダルトチルドレンが自分を取り戻すために
アダルトチルドレン(AC)には、大人になった今も癒えてない傷や今もときどき疼く古傷で満身創痍のはず。ですが、子どものころのことを「覚えていない」「思い出せない」と言うACもいます。これは、トラウマ反応の一種で、傷ついた出来事をなかったものとして否認するものです。
自分の感情を抑圧してきたACにとって、感情が自由に出てくることは脅威です。やみくもに暴露すればいいというものではありません。できる部分から自分を受け容れることで、本来の「自分らしさ」はよみがえってきます。リアルトレジャーのACカウンセリングでは、自分がACだと気づき、自分を取り戻すことを決意したという段階で「自分を取り戻す5つのステップ」に進みます。その最初の3つが大切です。
自分の人生は自分のものと気づくこと
毒親を正当に評価すること
毒親から離れること
順番はどれからでもいいのですが、人によっては、課題があり、超えるのが難しいステップもあるかもしれません。ただ、ステップを1つずつクリアするたびに、自由さやゆとりを感じられるようになるでしょう。
「自分を取り戻す5つのステップ」については、近日中にブログ記事を公開する予定です。リアルトレジャーのSNSでお知らせしますので、フォローしてお待ちください。
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