心を整える呼吸法~不安やストレスの軽減・トラウマケア・安眠

リラクゼーションの技法として呼吸は古くから用いられてきました。呼吸を整えることで心身の調和、情緒の安定を図ることができます。昨今では、過呼吸の予防や、トラウマのセルフケアにでも活用されています。

ここでは、フラッシュバックや不安や緊張を緩和する「呼吸再調整」と、自律神経を副交感神経優位に切り替えることでリラクゼーション効果を得る「腹式呼吸」をそれぞれ2つずつ紹介します。

 

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呼吸で心が整う理由

心臓の動きを意識的に早めたり遅くしたりすることはできませんが、呼吸は意識してコントロールすることができます。
人は焦ったり、緊張すれば呼吸は乱れ、浅い呼吸を何度も繰り返します。こんなときの脳波はβ波が出ています。落ち着いてリラックスしているときの呼吸はゆったり深くなり、α波が優位になります。

 

呼吸法は、意識して呼吸を整えることで、感情を落ち着かせ、神経を緩め、不安や緊張の軽減をめざすものです。
緊張や不安に翻弄されるのでなく、意識してコントロールしてくことで、心の状態を安定させたり、緊張状態からリラックスに導くことが自分でできるようになります。

 

●呼吸と自律神経
呼吸を整えることで効率のよいガス交換ができ、新陳代謝が促されます。でも、それだけではありません。普段、新鮮な空気を取り込むこと、吸う息に注意が向けられるのですが、心を整えるのに大切なのは呼気(吐く息)です。
自律神経には、起きて活動するとき活発になる交感神経と、眠ったり体を休めるとき活発になる副交感神経があります。吸気は交感神経を刺激し、呼気は副交感神経を刺激します。心を安定させ、リラックスさせるスイッチになるのが呼気なのです。

 

不安や緊張、フラッシュバックを緩和する
呼吸再調整法

認知行動療法でのストレスコーピングに用いられる呼気(吐く息)をゆっくり、長くすることで、不安と緊張を軽減する呼吸法です。

 

①基本のリズムを覚える

1分間10回程度のゆっくりした呼吸になります。
1回10分1セットを1日2~3セット行うことで、心が落ち着いてくるのを感じられます。

 

[やり方]
①身体の力を抜いて軽く息を吸う
②ゆっくり息を吐く(8~10秒)
③息を止めてゆっくり3つ数える

 

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所「ストレス・災害時こころの情報支援センター」がweb講座「呼吸法」を公開しています。このリズムを覚えるのがお勧めです。

 

②過呼吸時の呼吸再調整法

過呼吸が起きたとき、起きそうなとき、落ち着けるための呼吸法です。息を吸いすぎてしまう、フラッシュバック、パニック発作の予兆を感じたときも緊張をゆるめてくれます。

 

[やり方]
①安静な姿勢をとって軽く息を吸う
②5秒間息を止めて、呼吸を落ち着かせる
 ※息を吸わないように気をつける
③3秒かけて息を吐きながら
 心の中で自分に「リラ~ックス」と声をかける
④3秒かけて息を吸って、3秒かけて息を吐くをくり返す
 ※息は必ず鼻から吸う

 

5分程度くり返すと落ち着いてきます。

 

★呼吸再調整法は、不安で情緒が不安定になったとき、過呼吸やフラッシュバックになった/なりそうというとき、咄嗟にはできません。普段から練習しておくとリラックスもできて一石二鳥です。

 

自律神経を副交感神経優位に切り替える
腹式呼吸

呼吸をコントロールできるといっても、肺そのものを動かすことはできません。では「吸って~」と言われて、空気を吸えるのは、肺が収納されている胸郭を膨らませたり、縮ませることで、肺がつられて動いているのです。胸郭を動かすのに使われるのが外肋間筋という筋肉と横隔膜。外肋間筋を使うときは胸式呼吸、横隔膜を使うのが腹式呼吸になります。
腹式呼吸は、自律神経を刺激して、リラックス時に働く副交感神経を優位にするため、心身をリラックスに導いてくれるのです。

 

基本の腹式呼吸

呼吸に合わせて緊張がほぐれているイメージ。寝る前に行えば安眠効果も。

 

[やり方]
①背筋を伸ばして胸を軽く開き、
 お腹に手を置く
②鼻からゆっくりと息を吐く
 お腹が凹んで、手が沈むまで
 空気をすっかり吐き切るイメージで
③凹んだお腹を緩め、鼻から息を吸う
 少しずつお腹に空気を送り込むように
 数秒かけてゆっくり吸う
 お腹がだんだんと膨らんで
 お腹に置いた手が動くのを確める
④鼻からゆっくりと息を吐く
 空気をすっかり吐き出すイメージで
 息を吐き切る

 

慣れてきたら、息を吐き切ったあと③で吸うのとき、自然に空気が鼻から入ってくる感覚と、意図して自分で吸い込む感覚を確認してみましょう。この感覚を意識することで呼吸がより深まります。

 

不安時の腹式呼吸

静かな落ち着いた場所で、背もたれのある椅子に深く座って、身体を楽にします。時計や眼鏡を外して、身体を締めつけない服装で行いましょう。軽く目を閉じて、心を空っぽにします。途中、何かが頭に浮かんできてもそのままにしておきます。

 

[やり方]
①お腹に手を当てて、
 ゆっくり鼻から息を吸う
 吸い込んだ空気で
 肺の奥深くまで満たされるイメージ
②十分に息を吸い込んだら
 いったん息を止める
③吸うときの2倍くらいの長さで
 ゆっくりと息を吐く
 鼻でも口でもOK
 口から吐くなら
 唇をすぼめて細くゆっくり
 「すぅー」と息を吐き続ける

 

5分ほど続けるとで効果が出ると気分が落ち着いてきます。ちゃんと腹式呼吸が行われていれば、息を吸ったとき、お腹に置いた手が持ち上げられます。それを確かめながら続けます。

 

★腹式呼吸は副交感神経に切り替わるので、寝る前に行うと寝つきがよくなったり熟睡できたりします。

 

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