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ハッピーホルモン活用術:ストレス・疲労・落ち込みから回復する科学

つらい、痛い、苦しい気分と感覚をやわらげてくれるもの、実はわたしたちに備わってるってご存じですか? 脳内で働く神経伝達物質のうち「幸せホルモン」として知られるのがそれ、今回はドーパミン、オキシトシン、β-エンドルフィン、セロトニンを取り上げます。ただ、ちょっと副作用があったり、なかなかクセは強いです。意識してうまく使えば、ストレス解消・疲労回復の特効薬に、幸福感アップもまちがいありません

ハッピーホルモン:ストレス・疲労・落ち込みから回復する科学

ハッピーホルモン活用術1 人と励まし合う


高ストレスの職場でピリピリ、ムカムカ、カリカリ、そしてぐったり。こんなとき回復させてくれるのが、人の温もりです。この「温もり」をがっつり補給する最良の方法が、他者と褒めたたえ合うことです。「たたえ合う」という行動によって、ドーパミンとオキシトシン、2種のホルモンが同時に分泌されます。つまり、多幸感とリラックス、アッパー系とダウナー系の癒しをダブルで得られる欲ばりセットなのです。また「たたえ合う」ことで得られる温もりには、眠れない、寝つきにくい、眠りが浅い、朝、すっきりしないなど、睡眠のコンディションを整えてくれる作用もあります。

 

ドーパミンの効果


人は褒められると「愛情ホルモン」として知られている神経伝達物質ドーパミンが分泌されます。ドーパミンは、気持ちの落ち込みに歯止めをかけ、気分を上向きにしてくれます。この効果は、実際に職場でのコミュニケーションモチベーション生産性の向上のトレーニングとして取り入れられている「コンプリメント(褒める技術)」でも明らかです。たとえば、部下に対して肯定的なコミュニケーションをする上司と否定的なコミュニケーションをする上司を比較した場合、部下の生産性やストレス耐性の差は歴然。コンプリメントには、双方の理解を深める自己効力感を高める問題解決の選択肢が広がるなどの効果もあります。


加えて、褒められて気分がよくなった人には、別の人の気分をよくしたくなる作用が働きます。これを「好意の返報性」といいます。褒められると、うれしくなって「いやいや、そういうおまえだってスゴイじゃないか」と相手と褒め言葉の応酬になるのはこういうわけです。仕事で落ち込むとき、くたびれたときは、誰かと試していただきたい心のクイックケア(効果はバッチリ)です。


オキシトシンの効果


「たたえ合う」にスキンシップを加えると、オキシトシンが分泌されるのでさらに効果的です。ハグする、背中を叩く・撫でる(パンパンよりヨシヨシがオススメ)、握手する、手をつなぐ、身体を寄せ合う、くっつけるなど。オキシトシンは「愛情ホルモン」「抱擁ホルモン」とも呼ばれて、本来は赤ちゃんとふれったり、見つめ合うとき「かわいい」とやさしい気持ちになったお母さんに母乳を出させるための神経伝達物質です(男性にもあります)。


オキシトシンは、ストレス反応を弱め、情緒を安定させる効果があります。スキンシップをはじめるとわずか10分で分泌されます。そして、頻繁にくり返していることで、オキシトシンが出やすい脳になって、ストレス耐性が獲得できます。毎日誰かと10分少々スキンシップつきの褒めたたえ合いを楽しめば、ストレスに無敵の人になれるかもしれません。



ハッピーホルモン活用術2 食事を味わう


ストレスや疲労は、食欲にダイレクトに表れます。空腹を満たすためにだけに暴飲暴食したり、食欲が湧かずに食事が面倒になり、ついに抜いてしまう。いずれにせよ「食事がどうでもよく」になってしまうのです。 しかし「味わう」という感覚・行為と、ストレスや疲労には密接なつながりがあります。たとえば、ビールのCMでぐいっとビールを飲んだ「プハー」→疲れを吹き飛ばすという、左党の方なら誰でもお馴染みの快感でしょう。これが手を変え品を変え、ずーっと昔から商品訴求に使い続けられています。


疲れを吹き飛ばすβ-エンドルフィン


β-エンドルフィンは「脳内モルヒネ」「脳内麻薬」などとも呼ばれ、鎮静作用鎮痛作用抗ストレス作用があり、痛み・苦しみを緩和してくれる脳内物質です。快感や感動を得たとき、そして高い負荷を受けてストレス状態にあるとき分泌されます。ランナーズ・ハイを起こす物質として知られ、精神的ストレスを解消したり、疲労時の爽快感や苦痛を覚えるときの陶酔感をもたらし、つらさを帳消しどころか、プラスの感覚に変えるまでしてくれます。ドーパミンとの相乗効果で、高揚感、満足感、多幸感が得られます。β-エンドルフィンを増やすには、きつめの有酸素運動などトレーニングやサウナ、恋愛や動植物の成長でワクワク感を感じることがいちばん。 好物を食べることでも増えるのですが、それも好きなだけとか、高カロリーなものを思いっきり、激辛チャレンジなど、β-エンドルフィンまかせにすると美容と健康にはよくありません。注意が必要です。

脳内報酬系を刺激するドーパミン


「疲れたとき甘いものが欲しくなる」のは、甘いものを食べると、ドーパミンが分泌されるためです。ドーパミンはハッピーホルモンの中でも、「脳内報酬系」を刺激します。これは、生き物が環境の中でおいしい食べ物や魅力的なパートナーを見つけたとき、それらのターゲットに向かって一気に行動に駆り立てさせる神経系統を指します。疲れていようが、凹んでいようが、俄然元気が出ちゃう、いわゆる「やる気スイッチ」です。ちなみに、ドーパミンの材料となるのは、チロシンというアミノ酸で、茹でタケノコについてる白い粉っぽい、あれです。タケノコいっぱい食べるとドーパミンが出やすくなるかもしれません。

いいことづくめのドーパミンですが、ちょっと注意が必要で、それは薬物やアルコール、セックスなど「アディクション(依存症)」を起こす危険性もあるということ。好物を食べて「おいしい❤」と思ったとき、幸せを感じてβ-エンドルフィンが分泌されると、その快感を得る行動を「もっともっと」と追い求めさせるのが、ドーパミンなのです。β-エンドルフィン同様、暴飲暴食にはご注意ください


セロトニンの落ち着きが健康に誘う


同じ幸福感でもドーパミンやβ-エンドルフィンが「ワクワクする」「気持ちいい」なら、セロトニンは「ホッとする」「沁みる」「落ち着く」です。セロトニンは精神を安定させる神経伝達物質で、その多くが小腸で生成されています。腸内環境が整うと、脳疲労や心のコンディションが整うといわれるのはこのため。脳内では、ドーパミンほかの物質の働きを抑制することで、興奮や緊張を緩和し、行動への暴走を食い止めてくれる働きがあります。不安やストレスを和らげてくれるほか、健康的に食事を味わうには、とても頼もしい存在です。

セロトニンは、日光を浴びる(午前中がベター)、入浴(ぬるめの長風呂)、そしてリズム運動によって分泌が増えることが知られています。食べ物を「味わう」ときは、よく嚙むことがリズム運動になり、セロトニン分泌を促します。セロトニン分泌はリズム運動開始5分から始まり、20分でピークを迎え、その効果は2時間続きます。歯ごたえのある食品を意識してよく噛むことで、ストレス耐性が高まり、心の安定につながります。

β-エンドルフィン・ドーパミンとの上手な活用を意識すれば、「味わう」ことが心のコンディションを回復する特効薬になるというわけです。


おまけ:疲労回復に効果がある栄養素


参考までに、疲労回復に効果がある栄養素と食品の一覧です。あなたのお好きな食べ物があったら、試してみてください。(食品の後ろのカッコ内の量を食べると、1日の推奨摂取量・摂取目安量が摂れます)


  • イミダゾールジペプチド(推奨摂取量:200mg/日) 疲労軽減効果・抗酸化作用・pH調整作用 多く含む食材:鶏胸肉(22g)、カツオ(50g)、カジキマグロ(14g)、クジラ赤身肉(17g)、豚ロース肉(56g)

  • ビタミンB1(推奨摂取量:男性1.4mg・女性1.1mg/日) エネルギー代謝・疲労回復 多く含む食材:豚ヒレ肉(140g)、豚モモ肉(146g)、ウナギ(190g)。そのほかマダイ、カツオ、タラコ、枝豆、玄米に多く含まれる。

  • コエンザイムQ10(推奨摂取量:100mg/日) 抗酸化作用・エネルギー代謝・内臓機能向上・片頭痛予防 多く含む食材:イワシ、豚肉、牛肉、ブロッコリー、オリーブオイル

  • クエン酸(推奨摂取量:1g以上/日) キレート作用(疲労物質分解・排出)・エネルギー代謝・抗酸化作用・美肌効果 多く含む食材:酢(10~20mg)、キウイ(1~2個)、ミカン(1個)、イチゴ(5~6個)、梅干し(1~3個)

  • パントテン酸(摂取目安量:6mg/日) エネルギー代謝・善玉コレステロール増加・免疫力向上 多く含む食材:鶏レバー(60g)、豚レバー(83g)。そのほか、鶏ささみ肉、納豆、タラコ、イクラ、アワビ、アボカド、モロヘイヤ、きのこ類、乳製品に多く含まれる

  • L-カルニチン(摂取目安量:1mg/日) エネルギー代謝・心臓機能向上・筋肉増強・脂肪燃焼 多く含む食材:ラム肉、牛肉(赤身)、タラ、赤貝、タコ、チーズ

  • ビタミンC(推奨摂取:100mg/日) 抗酸化作用・免疫力向上・コラーゲン生成・美白美肌効果・ストレス抵抗力向上 生食100gで100mg以上とれる食品:ピーマン・パプリカ・キウイ・パセリ・ブロッコリー(加熱で半減)・レモン。ケールの青汁なら10gでOK

  • アスタキサンチン(推奨摂取量:6mg/日) 抗酸化作用・持久力向上・眼精疲労回復・筋肉疲労回復・美肌効果 多く含む食材:サケ、マス、イクラ、エビ、カニ、赤色の鯛の皮


※コリンザイムQ10とアスタキサンチンは推奨摂取量を食品から摂取するのが困難。コリンザイムQ10を100mg摂取するには、イワシで1.6kg、牛豚肉で3kg、オリーブオイル3.3ℓ必要になる。アスタキサンチン6mg摂取には、サケ300g、オキアミ150g、イクラ700g、エビカニなど甲殻類3kgが必要。



ハッピーホルモン活用術3 低周波(ネコのゴロゴロ音)


愛猫家の方に朗報です。ネコちゃんがゴキゲンで甘えてるときのゴロゴロ音には気を養う効能たっぷり含まれています。モフモフしてゴロゴロしてもらって、ご自分とネコちゃんを同時に癒しましょう。

ネコ(イエネコ)は、生後2日から早くもゴロゴロ音を出せるようになります。子ネコのゴロゴロ音は母ネコへの生存確認。ゴロゴロが母ネコのオキシトシンが刺激することで、母ネコには自然に「子どもたちを育てなくちゃ! ミルクあげなくちゃ!」という育児への欲求が生まれるのです。 ゴロゴロ音は周波数25~150Hzの低周波音で、筋肉痛を和らげる骨折の回復を早めるといった効果があるといわれています。そして、このゴロゴロ音は副交感神経を優位にさせるため、呼吸や心拍はゆっくり、血圧は低下します。低周波音だけでもセロトニンの分泌を促すのですが、ネコちゃんとのふれあいでオキシトシン、ドーパミン、β-エンドルフィンも一気に分泌されます。


周波数25~150Hzの音でセロトニンの癒し

ゴロゴロ音を「ronron」と表現するフランスでは「ロンロンセラピー(ronron thérapie)」と呼ばれる治療法があり、書籍やCDが発売されているほど。骨折の治癒、睡眠障害の改善、ストレスやうつ症状の軽減、リラクゼーションとして医療現場やスポーツジム、カフェでネコセラピストが活躍しています。



ネコちゃんのご家族・ご友人をお持ちでない方は、こちらを参考に「気持ちのいい」低周波音を見つけてみてください。


  • バスドラム(25~80Hz)

  • ピアノ1番(A0)~27番(B2)鍵盤(27.5~123.4Hz)

  • ベースギター・コントラバス(41.25Hz~)

  • 滝つぼの音(5Hz~)



ハッピーホルモンは効果絶大だけど、クセもあります。活用するうえでいちばん大切なのは、自分の身体にすでに備わっていて自由に使えると理解すること、その効果を認識することです。ぜひ今日から試してみてください。




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