アダルトチルドレン(AC)が失われた“自分”を取り戻すステップ

アダルトチルドレン(AC)は機能不全家族で大人の役割を担わされて育った人を意味します。

「毒親」「親ガチャ」などの言葉の広がりでメディアで取り上げられることが多くなったせいか、ACを自覚されてカウンセリングに来る方も増えてきました。
ACの多くは育成過程で受けたトラウマを持ち、アイデンティティの問題や生きづらさ、人間関係といった共通する問題に直面し、ときに死にたくなるほどの苦悩を抱えます。
機能不全家族という過酷な環境を生き抜いたサバイバーであるACが、自分を取り戻すためには、自分が何者なのかこの生きづらさの正体は何なのかなど、自分についてよく知る必要があります。ただし、ネガティブな面ばかりでありません、ACは自分を取り戻す武器となる強みも携えています。

 

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「自分が何者かわからない」
行方不明のアイデンティティ

親が子どもを育てるという機能が果たされない機能不全家族で、子どもは親に代わって親の役割を遂行しなければなりません。小さな肩で家族を支え、その重荷に耐え、我慢するのみです。家族や親のために本来の自分でない期待された役割を演じきってはじめて、自分が認められる、愛してもらえる、さもなければ、捨てられてしまうという思い込みがあります。
優等生やアイドル、あるいは叩かれ役や相談役など、ACが演じる役割は数パターンあることが知られています。これはACが幼い頃に身に着けた「機能不全家族に適応する」ための知恵や手段といえるでしょう。与えられた役割の思考や行動パターンを演じるうちに、いつしか自分の意思や感情を表現しなくなり、やがて、自分の意思や気持ちを見失ってしまう――その結果、健全にアイデンティティを確立させることができません。ACは「自分が何者か」「どこに自分の居場所があるか」わからないため、迷い、悩み、ときに疲れ果ててあきらめてしまうのです。

【参考】ACタイプ診断 > ①ヒーロー②スケープゴート③ロストワン
        ④ピエロ⑤プラケーター⑥イネイブラー

 

アダルトチルドレン(AC)の生まれた背景

「アダルトチルドレン」の概念は、1983年に機能不全家族に関するセラピーの第一人者、ジャネット・ウォイティツの『アダルト・チルドレン・オブ・アルコホリックス』(未翻訳)がミリオンセラーになったことで広く知られるようになりました。

 

当初は、1970年代からアメリカで問題になっていた、アルコール依存症の親と共依存の配偶者に育てられた子どもたち、ACOA(Adult Children of Alcoholics/アダルトチルドレン・オブ・アルコホリックス)を指す用語でした。現在は、アルコール依存症のみならず、身体的・精神的・性的な虐待があった機能不全家族で育った子どもたち、ACOD(Adult Children of Alcoholics Dysfunctional family/アダルトチルドレン・オブ・ディスファンクショナル・ファミリー)も含めACと略されています。

 

「生きづらさの正体」
アダルトチルドレンの特徴とは?

「アダルトチルドレン」の名づけ親であるジャネット・ウォイティツは、ACの共通点としてカウンセリングで「5歳のときの情緒と行動が、55歳になっても同じように、突然ひょっこり顔を出す」ことが命名の由来と述べています。ACが日常的に感じる生きづらさは、子どもの頃から身に染みついて、大人になっても離れません。ウォイティツは、ACの考え方や感じ方、行動について13の特徴を挙げています。ACの特徴として、ざっくりひとまとめに「生きづらさ」と呼ばれているものをひも解くとこんなふうに細分化できます。

 

ジャネット・ウォイティッツACOAの特徴
 

①自分の思考や行動に「これでいい」という確信が持てない
②最初から最後までやり遂げることが困難
③本当のことを言ったほうが楽なときでも嘘をつく
④自分に情け容赦ない批判を下す
⑤楽しむことがなかなかできない
⑥まじめすぎる
⑦親密な関係を持つことが非常に難しい
⑧コントロールする自信がない変化に過剰反応する
⑨他人から肯定され、受け入れられたいとつねに求める
⑩他人は、自分とは違うといつも感じている
⑪つねに責任をとりすぎるか、とらなさすぎる
⑫過剰に忠実で、無価値とわかっていてもこだわり続ける
⑬衝動的で、他の選択肢を考えず一つのことに自らを閉じ込める


(斎藤 学『アダルト・チルドレンと家族』学陽書房より)

 

このほか、複数の研究者が共通して挙げているACの特徴には次のようなものがあります。こちらも同様に「生きづらさ」の要因になっています。

 

自己評価が低く、判断に自信が持てない

親や家族からことごとく否定されてきたACは、自分を過小評価しがちです。一人の人間として尊重される実感を十分に得られなかったため「自分を大切にする、労わる」という意識を持てません。さらに、機能不全家族では、不都合な事実の否定・否認がくり返し行われます。たとえば、親が暴力を振るうことについて、「あれは躾。それに自分も悪かった。お父(母)さんがストレスを抱えていることをもっとわかってあげなくちゃいけなかったのに」と事実を歪めたり、すり替えたりして、「親がひどいことをした」という事実をなかったことにするのです。子ども時代のこの習慣のせいでACは、今起きている出来事をストレートに受け入れ、把握することが難しいのです。親に都合がよいストーリーを組み立てる選択肢しか持ち合わせていなかったので、考え方や視野も狭くなります。その結果、自分の判断に自信がもてず、他人の意見や評価に依存しがちです。

 

自分の感情や感覚に気づけない

感情を封印することで機能不全家族という過酷な環境に適応してきたACは、「今、自分が何を感じ、どんな気持ちなのか」という感覚が麻痺してます。感情を適切に表現ができません。たとえば、怒りが湧くと、無意識にキレやすい人に近づいて、怒りから恐れに感情をすり替えたり、ストレスを解消することをせず限界まで溜め込んで大爆発させたり、極端で危険な表現行動になるのです。「好き」「気持ちいい」という感覚も薄いため、楽しむことがなかなかできません。何かヘンだ!という緊張感のアラート(ACは幼い頃からそれに慣れっこだった)に気も止めず、同じ間違いをくり返したりします。

 

相手の期待に応えようとする

親の期待や要望に応えることで生き抜いてきたACは、自分の意思より相手や周囲の人の期待を優先します。いつも相手が何を望んでいるのかを察し、周囲からどんな評価を受けるかを気にします。そのため、はっきりした自己主張や「NO」の表明ができません。否定した相手から拒否され、見放されることを恐れるのです。相手に合わせた都合のよいストーリーのために自分の意思とは異なる小さな嘘を吐き、そんな嘘を重ねるうちに言動の不一致を招いたりもします。

 

自分を虐げ、トラブルや危険に身をさらす

情け容赦のない自己批判をする一方、自分を犠牲にしてまで相手の世話を焼きます。家庭で「安全」を味わうことができなかったACは、家庭と同じ不安定で危険が伴う環境や人間関係を無意識に選んでしまいます。その結果、自ら不幸になる道を選んだり、自分で幸せの芽を摘んでしまうこともしばしば。自己破綻へと自分を追い込んでしまうことも少なくありません。他人の言いなりになりやすく、事件や犯罪にも巻き込まれたり、虐めや搾取、詐欺のターゲットにされやすい傾向があります。たとえ理不尽なひどい仕打ちを受けたときですら「自分はこれが当たり前なんだ」と納得してしまうのです。

 

物事を極端にとらえ、過剰に行動する

親が絶対的存在だったACにとって、すべての物事を「白か黒か」「善か悪か」の二元論でとらえることが習慣づけられています。その結果、「自分が正しくて相手が間違っている」とか「すべては自分のせいだ」と思い込みます。その結果「全責任を負うかまったく無責任」「妄信かマル無視」といった極端な思考から過剰な行動につながります。言われたことに過剰に忠実だったり、自分の手に負えない事態にありえないほど混乱してパニックや思考停止を起こしたりします。過剰な行動の結果、心身の健康を損なったり、自暴自棄に陥りがちです。

 

罪悪感に突き動かされて必死になる

親や家族がうまくいかないのは「自分のせい、自分の努力が足らないからだ」と信じ込まされ、努力を続けたACは、「自分がもっとがんばれば、状況はきっとよくなる」と思い込むのです。家族の外での人間関係でも、相手の抱えている問題やチームの問題までも「自分のせいだ」と罪悪感が発動し、必死に尽くします。こんな罪悪感は、自分がやっと自由になれる、毒親に反論する、家族から離れるときにも蘇り、強烈に落ち込んだり、後悔することも少なくありません。罪悪感から、毒親の元へ戻ることもあります。

 

親密な関係を築くのが難しい

毒親と共依存関係にあったACは、他人と自分の境界線がはっきりしていません。相手の問題に入り込んだり、相手が落ち込むと自分も凹んだりします。健全な距離感がとれず、愛情は相手にしがみつくことだと勘違いしている節があります。一途に献身する一方、嫉妬深く、相手を束縛します。「愛されている」という実感を子ども時代に持てなかったACが自分を愛すること、他人と愛し愛されることは至難の業です。とにかく密着できる相手を得たいがために恋愛遍歴を重ねる人、あるいはまったく逆に、親密になることを怯えて回避するタイプもいます。

 

アダルトチルドレンの“強み”を活かす

自己否定的で自分に自信が持てず、周囲の他者を気にしすぎるACにとって、自分の長所や強みを見出すことはなかなか難しいことです。それどころか、生きづらさや絶望の中であえいでいるかもしれません。しかし、これほどまでに過酷な体験からは、必ず何かがもたらされます。それは、悪いものばかりでなく、力や才能といった、生きるリソースでもあります。今は、その存在を否定するかもしれませんが、ACにはたしかに備わっています。この力や才能がACに自分の人生を取り戻させ、自己実現や幸せへ導く羅針盤となるのです。

 

桁違いの逆境力

ACは幼い頃から多くの禁止令を受けて、家族や親の期待に応えることで、家族を支えてきました。ほかの子がのびのびと楽しんでいたとき、ストイックに役割をこなしていたのです。「できない」「疲れた」「やりたくない」と弱音も吐くことすらできず、努力を重ね、しばしば燃え尽きていたはずです。


たとえて言うなら、幼少期アスリートの英才教育を受けたようなものです。不可能を可能にし、無理を承知でぶち当たり、打ち負かすことで、不屈の忍耐力や精神力が備わりました。突破力、集中力は計り知れません。命の聞きさえあったのです(この過程で命を絶ったACも少なくはありません)、今、生き残っているということはそういうことです。

 

このエネルギーは、ほかの人とは比べ物になりません。ときには、周囲の人と比べてポロっと気づくこともあるでしょう「あれ、この程度でへばっちゃうの?」と。この逆境力によってビジネスで成功するACは少なくありません。何にせよ、ほかの人より無尽蔵にがんばりが効いてしまうので、勝ち目しかないのです。
ただ、このエネルギーの使い方や、努力の方向性については注意が必要です。思い込みで誤った使い方をすると大惨事を引き起こしかねません。正しい使い方を身に着ければ、あなたは最強です。そのために、思考や行動、情緒の癖をよく知り、修正や調整をしていきましょう。

 

クリエイティブな才能

ACの人たちのカウンセリングをするなかで、クリエイティブな才能の持ち主が多いということは、早い段階から気づいていました。ACは他者とのコミュニケーションや親密な人間関係を構築することは、たしかに苦手ですが、自分が愛するファンタジーの世界を構築することは非常に得意です。推論ですが、過酷な幼少期を過ごすとき、そのリソースになったものや自分を非難させる安全地帯となった場所が、ACの生きる支えとなっていたのだと思います。


音楽、読書・執筆、アート・デザイン、プログラミング、語学などの才能を、お仕事にしてステップアップする人も少なくありません。趣味として表現を楽しんだり、発表することで、苦手なはずの人間関係を構築する人もいます。

 

2018年に発表されたカリフォルニア州立大学の研究によれば、俳優・監督・ダンサー・デザイナー・ミュージシャンなどプロのパフォーマーは、被虐体験がある、機能不全家族で育つといった「逆境的児童期体験(ACE)」レベルの高い人が多いことがわかりました。研究者は「逆境的児童期を経験した大人のパフォーマーは創造的プロセスを認識したりその価値を見出したりしやすく、これらのグループの創造的プロセスを楽しむ能力は、『苦境から立ち直る力』を示しているのかもしれない」としています。

 

アダルトチルドレンの自己奪還のために

機能不全家族という過酷な環境は子どもにとってまさにサバイバル。生き抜いて大人になったACはサバイバーです。未だに癒えてない傷や今もときどき疼く古傷が多く残る満身創痍のはず、ですが、子どものころのことを「覚えていない」「思い出せない」と言うACもいます。これは、トラウマ反応の一種で、傷ついた出来事をなかったものとして否認するものです。


ACが、傷や痛みを見つめ「家庭で何が起きていたか」「親に何をされたか」に向き合うことで「怒り」や「悲しみ」や「恨み」がこみあげてきます。感情が自由に出てくること、これが大切なことです。その傷跡にふれ、なでられることで、吐き出せなかった感情が露わにされることで、溜められていた涙がこぼれることで、痛みは癒されていきます。そうしてはじめて、過酷な環境で十分に育てることができなかった自尊感情やアイデンティティが、「自分らしさ」を取り戻せるのです。

リアルトレジャーのACカウンセリングでは、「自己奪還5つのステップ」で毒親に支配や影響・洗脳されて失われてしまった自分を取り戻し、毒親との共依存関係から脱却していきます。

自分がACだと気づき、自分を取り戻すことを決意したという段階では、最初の3つが大切です。
 

①自分の人生は自分のものと気づくこと
②毒親を正当に評価すること
③毒親から離れること


順番はどれからでもいいのですが、このステップを1つずつクリアしていくたびに、生きるのが楽になり、また自由を感じられるようになるはすです。言い換えれば、3つのステップを経て、毒親との依存関係・支配関係が解消され、毒親の人生への影響がなくなった=解毒された、洗脳から解けた、といえるでしょう。

 

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